国立劇場おきなわ誘致
1972(昭和47)年、沖縄の本土復帰に伴い、組踊は国の重要無形文化財に指定されたが専用の劇場がなかった。芸能団体や沖縄県知事が国立組踊劇場の建設を国に要請したものの、長らく成果を上げられずにいた。誘致活動が停滞するなか、これを全県的な運動にしようと「国立組踊劇場誘致促進期成会」(以下、期成会)が1991(平成3)年に発足。会長には稲嶺惠一氏が就任し、財界人の人脈を生かして折衝を重ねた結果、事態は大きく前進した。1996(平成8)年9月5日には沖縄懇話会が1000万円を助成し、能と組踊の比較鑑賞公演「母と子の絆~物狂いのドラマ」を東京の国立能楽堂で開催。約660人の観客が能の「隅田川」と組踊の「女物狂」の競演を楽しんだ。古川貞二郎内閣官房副長官もこれを鑑賞。公演から5日後の9月10日、「沖縄問題についての内閣総理大臣談話」が閣議決定され、これに基づいて位置付けられた事業のひとつが「国立組踊劇場の設立」だ。
国の主導で、基本構想・計画、調査研究が進み、2000(平成12)年に着工、2004(平成16)年に「国立劇場おきなわ」が開場した。同劇場は琉球芸能の拠点として根づき、公演のほか調査研究や組踊伝承者の育成にも力を入れている。
沖縄の芸能を語る上で、今や欠かせない存在の国立劇場おきなわ。大劇場、小劇場、大中小の稽古室、資料展示室、記録映像も見られるレファレンスルーム(図書閲覧室)があり、実演家はもちろん研究者の拠点としても活用されている。(写真提供:国立劇場おきなわ)