沖縄懇話会30周年記念誌
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45いるが、帰りに沖縄に寄る。迎えに来い」と電話がありましてね。ちょうどその頃、私は琉球放送の社長で、役員会議で「スポーツを全国に流したい」「だったら女子ゴルフがいい」という話が出ていたところでした。私は中山さんをお迎えして、ホテルにご案内したわけですよ。中山さんが「若い社長は大変だな、仕事はうまくいっているか?」とお話をされて、「来春の開幕戦で女子ゴルフをやろうと思います」と言ったら驚かれましてね、「それはテレビの全国放送という意味か」「その通りです。沖縄で女子プロの競技をやって、全国へ流したい」「それはいい企画だね。スポンサーはどうなっているんだ」とおっしゃるから、「今、4〜5社と交渉しています」と。その中にダイキン工業さんの名前もあった。そしたら中山さんが「ダイキンが絶対にいい」とおっしゃるわけですよ。その日はそこでお別れしたんですが、3〜4日後にまたお電話をいただきましてね。「女子ゴルフの件はどうなった?」「色々進めていますが、中山さんのおっしゃるダイキンさんはなかなか社長が会ってくれませんよ」「じゃあ俺が電話するか」と。本当に電話されて「すぐダイキンに行け」とおっしゃるので、ダイキン工業さんに伺った。これがダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメントの始まりです。中山さんはこのダイキンオーキッドで、東京から財界人を50名、大阪から50名、沖縄から25名、政治家は入れない財界人限定のプロアマ大会をやるとおっしゃる。むしろ、それがメインの狙いです。翌々年の大会の時に私たちに「沖縄懇話会を作れ。せっかく日本を代表するトップの経営者が集まっているんだから、ゴルフだけじゃなくて、沖縄懇話会という場で、沖縄の振興策、沖縄の経済人の育成、それから三番目に沖縄は東南アジアに一番近い日本のゲートウェイだ、これをやりなさい」とおっしゃった。実はこれが沖縄懇話会のスタートです。人材育成の面では、「東京に出て堂々とモノを言える沖縄の経営者を育てろ」ともおっしゃいましたね。中山さんは設立総会の席で、「経済人は理論ばかり。討議ばかりしてないで、何かを実現しなさい」とおっしゃった。会社をスタートさせるという意味ですよね、沖縄側と本土側、合同で会社を作りなさいと。あの人は優しく言う鞍馬天狗ですから。日本の経営者は困ったことがあったら、みんな中山さんのところに行くんですよ。それをさばくので、財界の鞍馬天狗と呼ばれた。設立総会の場で、中山さんの言葉に応えたのが京セラの稲盛和夫会長でした。「私は沖縄で携帯電話を始めます。今、一番沖縄で困っているのは、東京と沖縄の電話料金がべらぼうに高いこと。私はこれを半額にします」と稲盛さんがおっしゃった。沖縄ではもうみんなびっくり仰天ですよ。――まるで小説みたいなお話ですね。――他に印象的な中山さんの発言はありますか?――優しい鞍馬天狗ですか。――その、「何かを実現」というのは?沖縄発展の土台を作ってきた懇話会、その舞台裏にある知られざるエピソードを語る。

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